住宅金融とシステム化の進展 ② 住宅融資の変化とシステムの進化


■ 今回のポイント

  • バブル経済以降、民間金融機関も住宅融資ローンのノウハウを得て自行ローンの推進のためのシステム化が活発化してきます。
  • 住宅金融公庫では、マスター情報を民間金融機関から引き取る「総合オンラインシステム」を平成12年度にサービス・インしましたが、住宅金融支援機構が現在行っている証券化支援事業はこのシステムがインフラとなって実現しているものです。
  • 近年、住宅ローンの収益性とリスク管理に関心が持たれるようになり、そのためのシステム化が要求されるようになっています。

住宅金融とシステム化の進展 ② 住宅融資の変化とシステムの進化

バブル経済を経て日本全体が経済停滞期に入り、法人の資金需要が減退すると、民間金融機関はリテールに活路を求めます。自行扱いの公庫融資債権の状況に目を向けると、延滞率・不良債権化率は自行の法人向け融資よりむしろ低く、かつ、景気に対する弾性値も相対的に低い。しかも、公庫融資の代理貸しを通じて事務ノウハウを修得し債権管理面では一通りのシステム化もできている。ということで、自行プロパー住宅ローンの推進に舵を切っていきます。

民間金融機関にとって住宅ローンが戦略分野となると、金利条件の改善と並行して審査面のスピード化が差別化要因となります。ここに至って大手金融機関(保証会社)を中心に、審査ノウハウと返済履歴等データ分析に基づいて自動審査システムを構築する動きが活発化したのです。

また、バブル期後の経済低迷は家計を圧迫し、余裕資金が貯まる都度、一部繰上返済に充てるという動きが一般化してきます。また、すでに金利自由化により頻繁にローン金利が変化する中では、金利低下時に大量の借換とそれに伴う繰上完済が発生します。これらを手計算で行い引落するのは見過ごせない事務負荷となりますし、時間がかかることはお客様の不満につながります。大手の金融機関を中心に繰上返済シミュレーションとその結果の口座自動振替への連動機能などが充実していきます。

一方、住宅金融公庫では、公庫融資の事務効率性向上と、それまで全面的に民間金融機関に委ねてきた融資事務・債権管理のシステムメンテナンス負担の軽減を図るために、公庫利用者のマスター情報(債権元帳)を民間金融機関から引き取るとともにそのマスター情報を使って公庫から金融機関に口座自動引落のための情報を配信し引落結果を集信する仕組みや、申込みからローン実行までの進捗を公庫自身が集中管理し、金融機関に提供する仕組みなどをシステム化しました。(そのシステム=総合オンラインシステムは平成12年度にサービス・インしています。)

現在、公庫融資は災害融資など一部を除き廃止されており、公庫自体も住宅金融支援機構に改組されて、証券化を前提としたフラット35ローンの買取・保証事業に業態転換しています。住宅ローン債権を証券化するためには買取債権1件1件の属性情報が不可欠な点で、総合オンラインシステムとフラット35の証券化支援業務は密接不可分な関係にあります。(換言すれば、仮に総合オンラインシステムが稼働していなければ、住宅金融支援機構の証券化支援事業は不可能だったということです。)

このように住宅ローンが戦略分野化した段階では、お客様及びお客様との接点での利便性・スピード向上のためのシステム整備が進んでいきました。

近年、住宅ローンは預金金融機関における総貸出量の20~30%程度に達しており、金融機関の間での熾烈な低金利競争が継続しています。採算ラインぎりぎりでのローン競争と云われる中で、ローン原資の調達期間(預金であれば通常3年)と貸出期間のギャップに起因するALM(Asset Liability Management)リスクや、期間の経過に伴って一定量のデフォルトが発生する信用リスク、さらには優良顧客ほど繰上返済が多く債権プールの相対的劣化が進行するというプリペイメント・リスクの問題が住宅ローンの採算性や金融機関経営に与える影響を分析しコントロールできているか否かが重要視される局面に来ています。

金融庁、日本銀行も住宅ローンの収益性とリスク管理に関心を寄せるようになって来ており、このような潮流の中でローン実務のためのシステム整備とは一味違った、住宅ローンの採算性・リスク分析・管理のためのシステム整備、さらに進んで「長期間に渡り金利変動に耐え、デフォルトを起こさず、プリペイメントもしないお客様」の発掘などを目指すデータサイエンスのためのシステム整備が今後の課題となりつつあります。

この記事を評価してください!

現在のスコア: 0.0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

【コメント投稿規約】
記事に対するコメント欄へのコメント(以下、「投稿コメント」という)については、以下のとおり取り扱うものとします。
1.投稿コメントは、ホームページの改善やプロモーションに活用させていただくことを目的としています。当社の判断にて、投稿コメントをホームページ等に掲載し、公開する場合がございます。また、原則として、掲載した理由または掲載しなかった理由の説明等はいたしません。
2.投稿コメントに個人情報その他の公開に不適切と判断される情報があった場合は、当社の判断で一部削除・編集したうえで公開する場合があります。
3.投稿コメントの内容について、それぞれの記事に無関係な内容の投稿はご遠慮願います。
4.投稿コメントに対して、当社は回答する義務を負いません。記事やその他コンテンツに関するお問い合わせは、お問い合わせフォームをご利用願います。
5.投稿コメントの内容に関する一切の責任はコメントを投稿した利用者自身が負うものとし、当社は投稿コメントの内容に関して一切の責任を負いません。
6.投稿コメントの削除や変更の依頼が利用者からあった場合、当社は応じる義務を負いません。
7.投稿コメントに関連して利用者の間で発生する議論や紛争等については、当社は原則関与いたしません。
8.投稿コメント機能の利用について、利用者に保証する責任を当社は負いません。
9.投稿コメント機能の提供を当社は予告することなく中止することがあります。

まりおの住宅金融雑論
春日日和(かすがびより)
今日も、直球勝負!

ページの先頭へ戻る