住宅ローンのリスク管理は大変! ② 貸し手側から見た住宅ローンのリスク

■ 今回のポイント

  • 金融機関のローンの中でも、住宅ローンは際立って長期という特徴に起因するリスクがあります。
  • 住宅ローンのリスクには、デフォルトリスク(信用リスク)、金利リスク、流動性リスクと云った金融常識として直観的に理解できるものだけでなく、優良顧客が早期に返済してしまう繰上償還リスクと云うものもあります。

② 貸し手側から見た住宅ローンのリスク

前回は住宅ローン市場の拡大に伴って高いリスク管理能力が必要になった事をお話ししました。
貸し手側から見た住宅ローンのリスクとはどんなものがあるのでしょうか。
住宅ローンが抱えるリスクの特徴は、法人融資を含めたすべてのローンの中でも突出して超長期のローンであるということです。

住宅ローンにおけるリスクの種類デフォルトリスクはローンが焦げ付き、回収不能になるリスクです。デフォルトリスクのコントロールは、主に保証会社が保証審査事務の中で行い、融資後回収不能債権の検証情報が金融機関にフィードバックされて営業方針に反映されます。ここで注意すべきは、住宅ローンのデフォルト発生は一般的に、融資直後1~2年は非常に低率で推移し、3~7年で急増、その後ピークアウトして返済年限(25年ないし35年)までダラダラと発生していく性質を持っていることです。これをデフォルト発生の期間構造といいます。
ここから云えることは、例えばある1年間に実行された住宅ローン債権の母集団が生み出す収益は、実行初年度ないし2年度目は高いけれども、その後10年内に低下(場合によっては損失が発生)し、その後は残存債権の質にもよりますが、比較的低位の損益で推移する傾向があるということです。

次に流動性リスク・金利リスクが挙げられます。預金金融機関は預金を集めその運用手段としてローンを実行するわけですが、貯蓄性預金は預入期間が3年以下の定期預金及び普通預金が圧倒的な割合を占めています。預金は預金者の請求に応じて払出す義務がありますので、これらを原資として25年ないし35年の住宅ローンを実行すると、調達原資と運用資産の期間ミスマッチが生じ、場合によっては金融機関で預金払出し停止をせざるを得ない事態が生じます。これが流動性リスクです。
また、預金金利は普通預金であれば半年ごと、定期預金であれば預入期間に応じて金利が設定されます。自動継続型の定期預金でも、更新時には金利がリセットされます。ところが全期間固定ローンや10年固定ローンは調達原資の金利変更に比べ金利変動がない、或いは少ないため、特に調達原資の金利が上昇した場合には【調達金利>ローン金利】という金融機関にとって大損となる可能性もあります。これが金利リスクです。

さらに意外なリスクもあります。繰上償還リスク(プリペイメントリスク)と云うものです。住宅ローンで利益を得ようと考える金融機関は、普通、安定した高収入があり社会的ステイタスも高いなど、デフォルト確率の低いお客様を獲得しようとします。これ自体は至極当然の行動です。
しかし、一般的にこのような優良顧客が25年ないし35年の返済期間を全うするような行動をとるでしょうか。答えは否です。
経験的にローン実行時点で契約上の返済期間が25年ないし35年であっても、実際の返済期間は平均15年程度と云われています。一定にお金が貯まると残債務の一部または全部を繰上返済するお客様が非常に多いのです。繰上返済をする方は、当然のことながらそのまま払い続けてもらってもデフォルトの危険性が極めて低い方々であり、貸し手側からみれば「得べかりし将来利益の喪失」を意味します。つまり、優良顧客は比較的早期に住宅ローン債権の母集団から離脱する一方、返済余力の乏しい方々やデフォルト予備軍はデフォルトになるまで母集団から離脱できず、いわゆるリスク濃縮と云う現象が起きて、住宅ローン事業の収益性が低下してしまうのです。

次回は、住宅ローンおけるリスクと収益性の管理を見ていきたいと思います。

この記事を評価してください!

現在のスコア: 0.0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

【コメント投稿規約】
記事に対するコメント欄へのコメント(以下、「投稿コメント」という)については、以下のとおり取り扱うものとします。
1.投稿コメントは、ホームページの改善やプロモーションに活用させていただくことを目的としています。当社の判断にて、投稿コメントをホームページ等に掲載し、公開する場合がございます。また、原則として、掲載した理由または掲載しなかった理由の説明等はいたしません。
2.投稿コメントに個人情報その他の公開に不適切と判断される情報があった場合は、当社の判断で一部削除・編集したうえで公開する場合があります。
3.投稿コメントの内容について、それぞれの記事に無関係な内容の投稿はご遠慮願います。
4.投稿コメントに対して、当社は回答する義務を負いません。記事やその他コンテンツに関するお問い合わせは、お問い合わせフォームをご利用願います。
5.投稿コメントの内容に関する一切の責任はコメントを投稿した利用者自身が負うものとし、当社は投稿コメントの内容に関して一切の責任を負いません。
6.投稿コメントの削除や変更の依頼が利用者からあった場合、当社は応じる義務を負いません。
7.投稿コメントに関連して利用者の間で発生する議論や紛争等については、当社は原則関与いたしません。
8.投稿コメント機能の利用について、利用者に保証する責任を当社は負いません。
9.投稿コメント機能の提供を当社は予告することなく中止することがあります。

まりおの住宅金融雑論
春日日和(かすがびより)
今日も、直球勝負!

ページの先頭へ戻る