住宅ローンの審査はどのように行われているのか? ② 審査システムとは?


■ 今回のポイント

  • 審査システムの方式は、ビジネスコントロールをしやすい「スコアリング方式」が主流を占めています。
  • 審査は厳しければよいというわけではなく、事業の規模と利益を長期的に確保する観点から、「ほどほどのリスクを取って貸し出す」ことが重要となります。
  • 住宅ローン審査をシステム化していく過程で、「自己規律の指標となる生活態度情報」という、見えにくいけれども本当は一番重要な要素を切り捨てているのかもしれません。

②審査システムとは?

審査システムには大きく分けて、次の3つの方式があります。
①スコアリング方式:
  属性項目ごと又は項目グループごとにデフォルト確率、延滞確率を数量化し、全項目又は
  全項目グループのスコアを算出してローン可否を判断する方式
②ディシジョンツリー方式:
  統計的にローン可否判断に有為に影響を与えるとされる項目をその影響が大きいものを
  上位において階層上に展開し、上位層から順にお客様情報と照合して任意の閾値を超えた
  場合には否決し、すべての項目をクリアした場合には可決とする方式
③ニューロ方式:
  多変量解析手法により一定の確率以上でデフォルト・延滞となる属性項目・データ閾値
  を算出してモデル化し、当該モデルに当てはまるか否かでローン可否を判断する方式

それぞれの方式には一長一短がありますが、「②ディシジョンツリー方式」では1項目でもネガティブな閾値を超えてしまうと他項目がどれほど良好でも否決となる(流れが不可逆的=経営的に機会損失)ケースが出てしまう、「③ニューロ方式」では純粋に統計的な解析結果によりローン可否が決し、項目・閾値の組合せに統計的相関はあっても因果関係は説明できないことがあるなどビジネスとしてのコントロールが困難、という短所があります。
現在は「①スコアリング方式」が、属性項目又は項目グループの重要性でウエイト付けができ、属性項目又は項目グループと判定結果に社会科学的・経済合理的な因果関係(意味付け)を設定できる(=ビジネスとしてのコントロールが可能)点で広く受け入れられ、圧倒的に主流を占めています。

さて、住宅ローン利用者の信用リスクを抑え込む手段としては、貸す対象を選ぶ(審査)ことと、貸した後の債権管理をしっかりやるという2種類がありますが、常識的には、審査の在り様が住宅ローンの将来の信用リスクの顕在化を大枠で決定づけると考えるべきでしょう。
審査はその時点の経済社会情勢を前提とした信用リスクを根っこから抑え込む手段であり、それが叶えば、経済社会情勢の大幅な変化がない限り、債権管理の労力は想定範囲に抑えられます。一方、債権管理は、審査がきちんと行われなければ次々と延滞債権が発生し延滞督促の事務量が膨大に膨れ上がった挙句に、相手方に資力がなければ結局はデフォルトしてしまいます。

それでは審査を極めて厳格に行うことが貸し手側の至上命題かというと、ちょっと違います。よほどのことがない限りデフォルトしない債権ばかり集めようとしても住宅ローン事業が拡大しません。
また、『リスク管理』のテーマでお話したプリペイメントリスクを考慮すると、デフォルト確率が低い債権は早期に繰上返済されて、住宅ローン事業として長期的な収益源にならないというパラドックスが生じます。(もちろん投信や保険の販売で手数料を得る等のクロスセリングによる優良顧客囲い込みは可能ですが。)

要はほどほどのリスクを取って貸し出す、もう少し具体的に云えば、一般的にはローン可否のボーダーライン付近或いはそれ以下に位置する方(これらの方はプリペイメントをするほどの余裕があるわけでもないはず)のうちどのような【属性的特徴】を持った方にデフォルトが少ないのかなどを仮説・試行・検証し、経験知を積み上げてノウハウをモデル化できるか否かが金利競争とは一味違った競争力の源泉になりうると考えます。

30年くらい前に、住宅金融公庫融資の代理貸しと債権管理を担当されていた大手銀行行員の複数の方から次のような話を聞いたことがあります。
「収入がかなり低くても、夫婦仲が良く少しずつでも貯蓄をしている人は延滞しにくい。当月の返済が滞っている方のご自宅を訪問すると、ご家族の靴が整理されているか否かで延滞が解消できるかどうかが分かる。」

では30年前の「夫婦仲が良い」、「毎月貯蓄をしている」、「玄関の靴が整理されている」というような生活態度情報を自己規律の高さという尺度で現代に置き直し、審査項目に取り入れる動きを各金融機関はしているのでしょうか。
筆者が知り得る限りでは審査項目として審査システムに組み込んでいるという話は聞いたことがありません。
むしろ自己規律性を見極めるという点では、クレジットカード運営会社などのほうがお客様の購買履歴・パターンを把握できる点で一歩も二歩も進んでいると感じます。

ひょっとすると、審査システム以前の問題として、現代の金融機関の多くは事務手間を掛けずに住宅ローンを推進しようとするあまり、信用リスクの顕在化に大きく影響する因子のいくつかには気付いていない(その当然の帰結として情報を取りに行こうとしないし、知見の蓄積もされない)のかも知れないですね。

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