住宅ローンの信用リスクマネジメント ①信用格付けモデル


■ 今回のポイント

  • スコアリング方式は、デフォルト発生率や損失率に影響する社会的・経済的属性を変数として重み付けした計算式で信用スコアを算出します。
  • 計算式は、経済状況や営業方針に応じて随時見直します。融資後の返済状況を分析して計算式を見直したり、営業方針に反映させたりします。
  • この信用格付けモデルにより、その人に融資するかしないかを決めることになります。但し、このモデルでは白黒付かず、人によるアナログ的審査を経て融資されるケースも少なからず存在します。

①信用格付けモデル

前回、前々回と住宅ローンの審査について概観しましたが、これらで触れた審査システムでの承認・否決の判断基準は、金融機関ごとに経済情勢や営業方針の変化等に応じて、さらにはデータの蓄積や分析手法の進化に応じて随時見直しされます。

通常、審査システム内でお客様の社会的・経済的属性をスコアリングし、場合によってボーダーライン付近の案件については人力によるアナログ的審査を経てローンを承認した後は、ローン実行後のフェーズに入ります。

ローン実行後は、金融機関のフロントにあたる営業部門や審査部門(実際には保証会社の場合が多い)はその時々の本部方針と肌感覚の現場実態に応じてさじ加減の調整をしながら新規顧客開拓・審査を行うわけですが、それとは別に、バックヤードに居るリスク管理部門が実績データを用いた信用リスクの統計分析を行い、信用リスクの傾向値に変化があれば審査システム内のパラメータ設定を変更したり、分析結果から信用リスク構造の変化を認識し新たな気づきが得られる場合には影響要因の入れ替え・追加などをした上で、営業方針等に反映させることにより行員の営業スタンスをコントロールします。

リスク管理部門は、次のような手順でデフォルト発生率(PD*1)や損失率(LGD*2)の水準が統計的に有意に異なる7~10のランクを作ります。

 ①経験的にPDやLGDの水準に影響する社会的・経済的属性や適用金利と云った説明変数
  の候補をリストアップ
 ②上記①でリストアップした説明変数候補を様々に組合わせて重回帰分析を施し、
  PD水準を合理的に説明できる(パラメータの符号条件が統計的に十分な信頼水準で
  経験値に整合しているなど)信用スコアの導出式を選定
 ③自行の営業方針・信用リスク許容度に基づくリスクコントロールを行うためのPDランク
  を設定した上で、信用スコアに応じた関数として定義

  • *1 Probability of Defaultの略でデフォルト確率のこと。ある期間に500件のうち
      8件がデフォルトするならば、当該期間でのPDは1.6%ということになる。
  • *2 Loss Given Defaultの略でデフォルト時損失率のこと。ローンがデフォルト
      したときに、残債権額から担保処分やデフォルト後の返済などによる回収額を控除
      して最終的に損失となる金額の融資額に対する割合で【1-回収率】となる。

①では、PDと因果関係のあると仮定される社会的・経済的属性として例えば次のような説明変数候補がリストアップされます。

  本人の収入(A) : 低額なら信用リスク大、高額なら信用リスク小
  適用金利 (B) : 金利高なら信用リスク大、金利低なら信用リスク小
  融 資 率(C) : 高割合なら信用リスク大、低割合なら信用リスク小
  取扱事業者(D) : 非提携事業者(1)なら信用リスク大、提携事業者(0)なら信用リスク小
  ※上記以外にも、勤続年数、貯蓄額、扶養家族数、自行給振口座有無など、金融機関
   ごとに様々な属性を考慮します。

②では,①の(A)~(D)が最も合理的にPD水準を説明するということであれば、信用スコアYは次のような重回帰式になります。

  信用スコアY=―aA+bB+cC+dD+e
  ※a,b,c,dは各変数のパラメータ、eは切片

③では、まず自行の収益目標等を意識しながら、例えば以下のようにPDランクを設定します。

  PDランク  PD/年         営業・審査方針
   PD1  0.10%以下        積極勧誘・無条件にローン実行可
   PD2  0.10%超 0.30%以下   積極勧誘・提携先なら無条件にローン可
    :       :             :
    :       :             :
  (損益分岐点PD:0.70%)
   PD6  1.20%超 2.00%以下   勧誘しない・基本否決スタンスで審査
   PD7  2.00%超         勧誘しない・無条件に否決

その上で、PD値を信用スコアYの関数として次のように定義します。*3






     PD =     
 1 + e-Y 

  • *3 信用スコアYとデフォルト確率PDの関係は、一般に線形回帰より
      ロジスティック回帰のあてはまりが良い場合が多いので、本編では
      ロジスティック回帰で表現することとした。

このような作業の結果として、PDランクごとの信用スコアの範囲が決まり、新たにローン申込みをされたお客様は、本人属性に応じて信用スコアYが自動計算され、スコア値に応じたPDランクに格付けされることになるのです。

これを信用格付けモデルと云います。

この信用格付けモデルで融資するかしないかの大筋を決めることになりますが、計算式だけでは白黒付かないケース(例えば、上記でPD3~PD5の区分に属する場合)もあります。そういう場合には、金融機関(保証機関)内の詳細審査基準に従って、人手によるアナログ的な審査により、最終的に融資するかしないかを判断することになります。

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