住宅ローンのプリペイメントリスクマネジメント ②Cox比例ハザードモデル


■ 今回のポイント

  • Cox比例ハザードモデルを使って、時間依存因子とその他の因子の掛け合わせで説明する期限前償還モデルを作ることができます。
  • ただし、このモデルでストレステストを行う場合には、線形モデルでは表現しきれない現実事象である「燃え尽き」現象に注意する必要があります。
  • 非線形の現実を表現できるのが、ブーステッド・ツリー(Boosted Tree)モデルであり、現在、その構築に取り組んでいます。

②Cox比例ハザードモデル

住宅ローンのプリペイメントリスク分析ではCox比例ハザードモデルがポピュラーな手法とされていますが、このモデルに実績値を適用して求めた推計値を前回の全額繰上返済率のグラフに重ねたイメージ図が以下のとおりです。

CoX比例ハザードモデルによる全額繰上返済率推計(イメージ)

このグラフ(あくまでイメージですが)では、全額繰上返済率の推計値が実績値に近似しており相関係数も高いはずです。また、ベースラインハザードは経過月数を含む時間依存因子で説明できる全額繰上返済率を示しています。

固定期間5年の住宅ローンの場合、選択固定期間が終了し金利がリセットされる60ヶ月経過前後や、金利リセット後さらに5年経過した時点の120ヶ月経過前後に大きな山が現れていますが、実際のデータを使ってこのような結果が得られれば将来の予測に使えそうですね。

しかし、Cox比例ハザードモデルにはデメリットもあります。
経過月数以外の影響因子のうち影響度の大きい(β値が高い)因子にストレス(例えば年収データを一律100万円上下させるなど)を掛けた場合のグラフイメージを使って説明します。

Cox比例ハザードモデルによるストレステスト結果(イメージ)

このグラフでは、どの経過月数で見ても【年収+100万円】のケースでは全額繰上返済率は一定倍率でプラス方向に、また【年収―100万円】のケースでは一定割合でマイナス方向にシフトしています。

このモデルはまさに比例ハザードというだけあって、加えられたストレスの程度に比例して一方向に指数倍(exp関数のため)変化する線形性があるのですが、現実の世界においてもストレスが継続する限り一定倍のハザードが起こり続けるということは果たしてあるでしょうか。

ある因子によって全額繰上返済をする人が急増しても、一定期間が過ぎるとその後は感応しなくなるという現象が良く見られます。これは統計分析を行う人たちの間で燃え尽き(Burnout)と呼ばれる現象であり線形モデルでは表現しにくい現実です。

金融庁検査や日銀考査をクリアするためのプリペイメントリスク分析としてはCox比例ハザードモデルは十分に有用なモデルと云えるでしょうが、実務において営業・審査方針の裏付けに活用するためには必ずしも感応度が指数倍とならず非線形の現実を表現できるモデルが欲しいところです。

当社では、東京国際コンサルティング(株)(略称TIC)代表取締役小黒直樹氏とアライアンスを組んで、非線形の現実を表現できるブーステッド・ツリー(Boosted Tree)モデルの構築を手掛けていますが、次回はこの手法について紹介しましょう。

注:本稿で紹介したグラフは、すべて筆者の経験に基づいて想定データを作成し、そのデータをグラフ化したものです。

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